ゴルフスイング中の右肩の痛み:可動域制限と動作不良へのアプローチ
【来院の背景】
ゴルフ歴16年、40代女性、月に2ラウンド。右打ち。約2ヶ月前からドライバーやアイアンのスイング時に右肩に鋭い痛みを感じ始め、痛みが少しずつ強くなっている。特にバックスイングからトップにかけて右肩の詰まりと痛みが気になる。ご自身でストレッチなども試されたものの、改善が見られず、ゴルフを続けることに不安を感じていたとのことで当院にご来院されました。
【検査と原因】
TPIスクリーニングテストとカイロプラクティック検査の結果、以下の特徴がみられました。
- 右肩関節の著しい外旋制限:
ゴルフスイングにおいて、右の肩関節はバックスイング時に外転と外旋を強いられますが、この外旋可動域に著しい制限がみられました。この制限はスムーズなバックスイングを妨げ、スイングアークやフェイスコントロールの調整が難しくなります。右肩関節の外旋角度の減少により、バックスイングのトップポジションで右肩への物理的な「詰まり」や過剰なストレッチ負荷となり、痛みを誘発していると考えられます。 - 胸椎の伸展・回旋制限:
体幹の大きな回旋を担う胸椎の柔軟性、特に回旋可動域は、ゴルフスイングに必要な上半身の捻転(Xファクター)を効率的に生み出す上で非常に重要です。また胸椎が伸展することでバックスイング~トップ時に肩甲骨が内転し、肩関節の外旋がスムーズに行われます。しかし、胸椎の柔軟性が低下していると、バックスイング中に他の部位(特に腰椎や肩関節)を無理に動かす「代償運動」が生じます。これは、右肩への負担を増加させる要因となります。 - 肩甲骨周囲筋の機能低下:
肩甲骨は肩関節の土台であり、その安定性は腕のスムーズな動きに不可欠です。特にバックスイングの初期からトップにかけて、右の肩甲骨周囲にある筋肉(僧帽筋上部、中部、下部、肩甲挙筋、菱形筋など)が高い活動を示し、肩関節の安定化と肩甲骨の引き込み・上方回旋に重要な役割を果たします。これらの機能低下は、スイング時の肩関節の不安定性を招き、結果として右肩関節への負担増加につながる可能性があります。
これらの身体的特徴から、バックスイングにおいて右肩関節に繰り返し「過剰な負荷」が集中していたと考えられます。ゴルフ障害の多くは、反復的な動作による酷使(オーバーユース)に起因することが報告されており、今回の右肩の痛みもこのメカニズムに当てはまると考えられます。このようなお体の状態が回旋筋腱板炎(腱の炎症・変性)といった、ゴルファーに多くみられる肩関節障害を引き起こしていた可能性があります。
【施術内容】
お身体の状態に合わせてオーダーメイドなアプローチを行いました。
- 関節矯正とモビリゼーション:
右肩関節、胸椎、頚椎など、可動域が低下していた関節に対して、カイロプラクティックの手技を用いて関節の柔軟性を改善し、本来の動きを取り戻すための矯正を行いました。これにより、神経系の働きを正常化し、運動制御の向上を促します。 - 筋膜リリース:
右肩関節周囲の筋群(回旋筋腱板、大胸筋、僧帽筋、前鋸筋など)の筋膜の緊張を緩め、柔軟性を高めるための手技を重点的に行いました。筋膜リリースは、痛み軽減、可動域改善、血流増加に効果が期待されます。筋膜は全身で繋がっているため(筋膜連鎖)、症状のある部位だけでなく、離れた部位へのリリースも有効な場合があります。 - 運動療法とホームエクササイズ:
- 肩関節外旋可動域の改善ドリル:制限されていた右肩の外旋可動域を段階的に広げるためのエクササイズをアドバイス。
- 肩甲骨安定化エクササイズ:僧帽筋や前鋸筋など、肩甲骨周囲の筋肉を強化し、肩関節の安定性を高めるエクササイズを行いました。
- 体幹安定化エクササイズ:スイング中の体の軸を安定させ、下半身から上肢へのパワーの伝達を効率化するために、プランクやバードドッグといったコアトレーニングを行いました。
- 胸椎の回旋・伸展可動域向上エクササイズ:胸椎の柔軟性を高め、体幹の大きな回旋動作や肩甲骨の内転を促す体操を取り入れました。
【経過・結果】
施術開始して約1ヶ月後には、バックスイングのトップにかけての右肩の痛みや詰まり感も減少し、以前よりもスムーズにクラブを振れるようになりました。2ヶ月後には、胸椎の柔軟性や肩甲骨の安定性、肩関節の外旋角度も改善され、その頃にはゴルフのラウンド中に痛みを感じることなく、フィニッシュまでしっかりと振り切れるようになったと報告を受けています。
【お客様の声】
「最初はただ『右肩が痛いから何とかしたい』という気持ちで伺いました。でも、通ううちに、単なる痛みの解消以上の変化を感じています。肩の痛みはもちろん改善し、スイング中の違和感も消えましたが、それ以上に驚いたのは“体全体が軽くなった”感覚です。
以前は、スイングのたびに無意識に力んでいたのか、終わったあとに疲労感が残っていたのですが、今はラウンド後も体が軽い感じがします。
何より『またゴルフが楽しめる!』という前向きな気持ちが戻ってきたのが一番嬉しいです。」
【担当コメント】
バックスイングからトップにかけての右肩の痛みは、回旋筋腱板への反復負荷が背景にあるケースが多く、特にゴルフのような繰り返しの動作では、軽い違和感が次第に炎症や組織の変性へと進行することもあります。症状が長引けば、強い痛みの影響で思うようにゴルフができなくなる事態にもつながりかねません。
今回のケースでは、痛みを感じ始めてから比較的早い段階でご相談いただけたことで、原因となる関節の可動域制限や筋機能の低下に対して早期にアプローチすることができました。
「また痛みなくゴルフを楽しみたい」という思いは、どのゴルファーにとっても切実な願いです。その思いに応えられるよう、全力でサポートしてまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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