HPA軸(脳-副腎)・ホルモンバランスに着目した最新研究8選
男性不妊の原因は一つではありません。遺伝的要因や生活習慣に加えて、近年とくに注目されているのが「ストレスによるホルモンバランスの乱れ」です。
ストレスが続くと、視床下部–下垂体–副腎軸(HPA軸)が過剰に働き、コルチゾールなどのストレスホルモンが過剰に分泌されます。
その結果、テストステロンの低下やDHEAの減少が引き起こされ、精子の質や性機能に深刻な影響を及ぼすことが、国内外の研究で明らかになっています。以下にご紹介するのは、男性不妊とストレスホルモン、HPA軸に関する比較的新しい信頼性の高い研究8選です。
- 心理的ストレスと男性ホルモンの包括的レビュー(2024)
International Journal of Molecular Sciences
心理的ストレスがHPA軸を活性化させ、コルチゾールを増加させる一方で、HPG軸を抑制してテストステロンの産生を低下させる流れを詳細に解説。精子形成に関わるホルモン(GnRHやLH)の分泌も妨げられ、精子数や運動率、形態異常の増加につながる
- コルチゾールと精子の質:メタアナリシス(2021)
Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology
複数研究を統合した結果、血中・精液中のコルチゾール値が高い男性は精子濃度、前進運動率、総精子数が有意に低いことが明らかに。コルチゾールは男性生殖機能のリスクマーカーとされる。
- PTSDとテストステロンの低下(2021)
Psychoneuroendocrinology
心的外傷後ストレス障害をもつ男性は、健常者と比較して明確にテストステロン値が低下。慢性ストレスによるHPA軸の機能異常が、性ホルモン分泌に影響を与えることが示された。
- 日本人男性における唾液コルチゾールの日内変動(2023)
獨協医科大学 / Scientific Reports
心理的ストレスの強い男性不妊患者では、朝夕の唾液コルチゾールのリズムが乱れていることが確認された。HPA軸の生理的リズムが崩れることが、生殖機能障害に直結する可能性を示唆。
- DHEA補充でホルモン改善(2022)
Andrologia
乏精子症の男性にDHEAを補充した結果、テストステロン/コルチゾール比が有意に改善。精子濃度の増加も認められた。DHEAは副腎で生成される前駆ホルモンであり、HPA軸のバランス調整に寄与。
- マインドフルネス介入と精子の質の改善(2022)
Mindfulness
8週間のマインドフルネス実践により、不安・ストレスの軽減とともに、精子の前進運動率が改善。心理的アプローチが生殖機能に好影響を与える可能性があることを示した貴重な臨床データ。
- 職業ストレスとテストステロンの低下(2023)
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
バーンアウト(燃え尽き症候群)と診断された男性は、テストステロン値が低くなるリスクが顕著。慢性ストレス状態=副腎疲労との関連が注目されている。
- コルチゾールによる精巣障害の分子機序(2021)
Journal of Cellular and Molecular Medicine
動物実験により、ストレスホルモンが精巣内の保護バリアを破壊し、精子形成障害を引き起こすことが判明。コルチゾールの影響が細胞レベルにまで及ぶことを示した基礎研究。
【まとめ】
ストレスは目に見えにくい問題ですが、HPA軸を介して男性ホルモンや精子の状態に直接的な影響を与える“確かな医学的事実”が多数報告されています。
「コルチゾールレベルの増加」「テストステロンレベルの低下」「DHEAの枯渇」といったホルモンの乱れは、放置すると妊孕性(にんようせい)だけでなく心身の健康にも影響を及ぼすリスクがあります。
妊孕性(にんようせい)とは、妊娠するために必要な能力のことです。妊娠するためには、卵子と精子、そしてそれらを運ぶ生殖器や、内分泌の働きなど、様々な要素が関わります。
男性不妊で悩む方は、精液検査やホルモン検査と並行して、ストレスケアや生活習慣の見直し、腸内環境の改善など、統合的なアプローチを検討してみてください。
TOP「マタニティ・ハンズケア」専門ガイド|骨盤・内臓・体質にアプローチするナチュラルケア
【妊活・不妊(女性)】卵子の質・体質改善・妊活サポートの実践法
【妊活・不妊(男性)】精子の質・ストレス管理・ナチュラルケアによる男性の妊活