手首・膝・腰の痛みは“ホルモンと免疫”のバランス異常かも
「授乳のたびに手首が痛む」「膝の違和感がなかなか引かない」――そんな出産後の痛みに悩む方は少なくありません。
特に手首、膝、腰などの関節に起きる慢性的な痛みは、単なる育児疲れではなく、「産後リウマチ(産後関節炎)」の可能性も考えられます。
産後リウマチの症状は女性ホルモンや免疫の急激な変化が関係しているといわれています。ここでは、最新の研究データをもとに、産後リウマチの特徴とケアのヒントをお届けします。
産後にリウマチを発症する人がいる理由
妊娠中は免疫機能が抑えられ、胎児を異物とみなさないよう体が調整されています。ところが、出産後にはこの免疫抑制が一気に解除され、自律神経とホルモンの乱れが重なることで、自己免疫疾患の発症リスクが高まるのです。
2020年の研究では、出産6か月以内に関節リウマチを発症した女性が有意に多くみられたことが報告されています(Westra et al., Autoimmun Rev., 2020, PMID: 32563410)。
エストロゲンとプロゲステロンの急減が関節炎を誘発する?
妊娠中に高かったエストロゲンやプロゲステロンは、出産後急激に低下します。このホルモンの変動が、炎症を抑える働きを弱め、関節周囲の免疫バランスを崩す原因になると考えられています。
あるレビュー研究では、エストロゲンの急減が関節炎の発症リスクを高める可能性があると示唆されています(Tanaka et al., Mod Rheumatol., 2021, PMID: 33646955)。
リウマチ様の症状は手首・指・膝に多い
実際の産後リウマチは、授乳や抱っこで酷使する部位に出やすく、特に「ドケルバン病(腱鞘炎)」や「バネ指」などとの鑑別が必要です。
炎症性疾患との違いは、関節の腫れ、朝のこわばり、左右対称性などで、放置すると進行するリスクもあるため注意が必要です。
血液検査と画像検査でわかる“リウマチの兆候”
長引く関節痛や腫れがある場合、病院での検査によってリウマチの可能性を確認できます。
・リウマトイド因子(RF):関節リウマチの多くで陽性となりますが、陰性でもリウマチである場合があります。
・抗CCP抗体:初期から陽性になりやすく、RFよりも早期診断に役立ちます。
・炎症マーカー(CRP、ESR、白血球数):体内の炎症の程度を示す指標です。
・関節の診察:腫れ、痛み、朝のこわばりの有無を確認します。
・レントゲン・超音波検査:関節の状態を画像で観察し、炎症や変形の程度を把握します。
免疫と腸の関係にも注目が集まっている
自己免疫の調整には「腸内環境」や「腸管免疫」の状態も深く関わっており、産後の食事や栄養状態も重要な要素です。2022年の研究では、腸内フローラの乱れがリウマチの自己免疫活性を助長する可能性が示されています(Xu et al., Front Immunol., 2022, PMID: 35573597)。
栄養療法やプレ・プロバイオティクスの摂取、ストレスケアも、自然な改善アプローチとして注目されています。
やさしい施術と生活改善が大切
当院では、手首や膝の炎症に無理な刺激を与えることなく、背骨や骨盤、内臓、自律神経のバランスをやさしく調整することで、全身の血液循環や痛みに過敏な感覚を緩和していきます。
分子栄養学や腸内環境の改善、必要に応じた医療連携を通じて、産後の慢性炎症を多角的にサポートします。
【まとめ】
産後の手首や膝、腰の痛みが長引くとき、それは単なる育児疲れではなく、「ホルモンと免疫のバランス異常」が背景にあるかもしれません。産後リウマチは、出産後半年以内に発症するケースも多く、早期の見極めとケアが回復の鍵になります。
これまでの当院での臨床データからも、医療機関での投薬治療と並行して、体質や栄養状態を整えること、腸内環境を改善することによる“炎症のコントロール”が非常に有効であることがわかっています。
一般的にはあまり知られていないのですが、悪玉菌が産生する炎症物質の低減、副腎・自律神経の調整など、からだの内側からのケアが、根本的な改善の手助けとなります。
「これっておかしいな」と感じたら、その気づきがケアの第一歩。自然な視点で体を整え、赤ちゃんと一緒に心地よい毎日を取り戻していきましょう。
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